必笑小咄のテクニック。

必笑小咄のテクニック (集英社新書)
オチのつけ方読本、とでも申しましょうか。
多少強引ではありますが、小咄をいろんなタイプに分類しまして、
それぞれたくさんの例文とともに解説してくれております。
練習問題もあります。
まあ、ほとんどの例文が、ええおっさんが嬉しそうに話すたぐいのものですし、
6割がシモネタ、2割が小泉&ブッシュ批判ですし、
実用性という意味では、あまり使えないかもしれません。
 
著者の米原万里さんは、ロシア語翻訳者、作家、エッセイストとして大活躍され、
いろんな文学賞なんかも獲られています。
ロシアに精通されているからか、この本の中では
「ロシア人の会話には小咄的な要素が多分に盛り込まれている。
 社会主義下のひどい暮らしを楽しく生きぬくための素敵な知恵だ」
なんてことをおっしゃってまして。
本文の結びも、こんな具合です。

病気とか、不幸な事故とか、人を失ったり裏切られたりする悲しみとか、
悔しさとか、理不尽な差別とか、不公正とか、腹立たしい悪政とか、
単なる間の悪さとか、窮地に立つと、
人は視野が狭くなって、ますます自分を追い詰めてしまいがち。
苦しいときこそ、そんな自分の不幸の元を突き放して笑い飛ばしたいものだ。

この本は、米原さんご自身が2年間癌と闘いながらまとめられた、
彼女の遺作にあたるそうです。
人生に、すごいオチのつけ方ですね。
かっこいい、と思いました。